夜寒の猫
 (お侍 拍手お礼の五)
 


不眠不休さではヘイハチのことは言えない、
お前もいい加減少しは寝ておけと、半ば強引に寝間へと押し込まれ、
確かに休むのも仕事のうちかと、衾を延べて横になり。
うとうとしかけた夜半のこと。

  …え?

何の前触れもないままに、
不意に衾の裾がめくられたもんだから。
誰ぞがそこまで近づいてた気配へ
気づけなかった自分であったらしいことも含めて、
何事かとギョッとしたものの。

  …ああ、なんだ。

ごそもそ、潜り込んできたのが誰なのかが判ったその途端、
要らぬ緊張を強いられたと怒るより、
何だか微笑ましい思いで胸のうちが満たされる。

  どうしました? 炉辺でうたた寝してらしたのに。
  カンベエ様と喧嘩でもしなすったか?
  ああ、ハイハイ、もう訊きませんよ。
  この通り、ごめんなさいです。
  どっこもはみ出してやいませんね。
  爪先とか背中とか。
  ああほら、もっとお寄りなさいな。
  肩が出てるじゃないですか。
  掛けるものだけ も1枚、持って来ましょうか?

いくら細身でも二人じゃあ狭かろと、
頃合を見て掛けるもの、
誰かさんが持ってきてくださると判っているから。
それまでに何とか寝てくださいねと、
髪を下ろすとたちまち懐いてくる、金色の毛並みをした懐ろネコさんへ、
苦笑が止まらぬシチロージだったりするのである。




 *何だかもうもう、私だけが楽しくてすいません。
  拍手お礼はすっかりと、シチさんがお母さんの“79天国”と化してますね。
  カンベエさまも、眼福だのと、喜んでます、はい。
  誰も止める人がいないです。
(苦笑)

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